今回は、「妊婦の栄養状態が悪いと、胎児の成長や赤ちゃんに悪影響が出る説」を検証します。「医師も実践している子供が丈夫になる食事」(櫻本美輪子、定真理子/ワニブックス社)に次のような気になる記載がありました。
同じ1人の女性でも、妊娠中に十分な食事ができた1人目の子どもと、つわりがひどく、何も食べられたなかった2人目では、生まれてくる子どもの健康状態は違うものなのです。
理想的な母体は、つわりがない、むくまない、貧血もなく、仕事をお持ちの方なら出産直前までバリバリと働けるような状態です。産後にひどいマタニティーブルーもありません。もちろん、これは栄養状態のいい母体です。
このような場合、胎児は満期におよそ3kg前後で生まれてくることが多いようです。また、免疫力が十分にあって感染症にかかりにくく、皮膚や粘膜も健康ですからアトピー性皮膚炎やぜんそくになりにくい傾向があります。情緒も豊かで、コロコロと笑うかわいらしい赤ちゃんになるでしょう。
ところが母体の栄養状態が悪いと、赤ちゃんは十分な栄養を蓄えることができません。低体重児(未熟児)として産まれることもあります。
この主張は本当なのか、実体験ベースで検証してみます。
回答1:母体の健康だけで赤ちゃんの情緒や健康は左右されない
否定派
すずこママ(1980年生まれ/子供3人/元看護師&保健師)です。私の場合、3人ともつわりはそこそこ辛かったので、食事もつわりの時期だけはあまりとれていなくて、体重も減少してしまいました。でも、つわりが終わってからは、普通に食事をとれていたので、全体的に見れば食事面での栄養状態は良好でした。
「バリバリ働く」と言っても、座っての事務仕事か、体力を消耗する力仕事なのかで、母体にかかる身体的・精神的負担も全然違うと思います。
私は1人目、2人目の時は仕事もそれぞれ条件が違って、1人目は事務的な保健師の仕事、2人目の時にいたってはフルタイムの看護師だったのでほとんど1日中立ちっぱなしでした。ハードだった分、切迫流産、切迫早産にもなってしまい、自宅安静や入院もしました。
そんなストレスフルな職場で働いて、切迫早産も経験して、つわり、貧血、むくみもパーフェクトに体験した2人目ですが、3人の中で一番大きな体重(3826g)で産まれました。
もうすぐ3歳になりますが、今まで特に感染症にもかからずに、アレルギーやアトピーもなくて、情緒の安定した笑顔もかわいい健康優良児です。他の1人目、3人目も妊娠経過こそ違いはありますが、同じようによく笑うし、情緒の安定した落ち着いた子どもたちです。
妊娠経過は一人として同じということはないし、妊娠・出産は理屈だけでは説明がつかないほど本当に神秘的なものです。母体が健康であるに越したことはありませんが、母体の健康だけが赤ちゃんの情緒や健康を左右する要因とはならないと思います。
なので、私が3回の妊娠を経て体験したことを思えば、「妊娠中の栄養状態が悪いと、胎児の成長や赤ちゃんに悪影響が出る説」は間違っていると言えます。
回答2:同じ栄養状態だった双子ですら、生まれてからの体質はまったく違う
否定派
もこママ(1984年生まれ/子供4人&双子出産)です。この書籍の内容はて全てが正しいとは思いません。もちろん、理想的な母体の状態は、自分自身がそうでありたいと思う理想像ではありますが、だからといって、産まれてくる赤ちゃんの健康状態や情緒を左右するものではないと思います。
実際、私は一人目のつわりがひどくて、切迫流産、切迫早産にもなりました。薬の影響もあって、産まれるまで寒天ゼリーと焼き芋しか食べることができませんでした。
「こんな食生活で大丈夫なの?」と、不安に思いましたが、赤ちゃんは2600gと小さいながらもきちんと成長してくれました。とても健康で今まで特に問題もなく、すくすく育っています。
一方、次男の妊娠中は、つわりはあったものの、つわりが終われば好きなものを食べて、切迫にもならずに私は健康そのものでした。でも、次男は4人の中でもっとも大きな2850gでしたが、ひどいアトピー性皮膚炎と喘息をもっていて、アレルギー体質です。
情緒の面では、自閉症の診断を受けたこともあります。学校では普通学級で問題なく過ごせていて、周りにも違和感なく溶け込んでいますが、たまにこだわりの強いところや気持ちの切り替えがうまくいかない様子が見られます。
この書籍の「母体の栄養状態が悪いと、生まれてくる子に悪影響が出る」という主張に当てはめると、長男と次男は反対の結果になっています。
そして、三男・四男の双子妊娠では、つわり中は何も食べられずに、体調も悪くて起き上がることもできませんでした。つわりが終わっても、むくみがひどかったり、何かとトラブルがありました。
そんな状態で生まれてきた双子は、三男は肌トラブルもなく健康です。でも、四男は肌トラブルが多くて、母親の勘で「いつかアトピーと戦う日が来るのでは?」と感じています。
このように、双子ですらもまったく違うので、お母さんの栄養状態だけで赤ちゃんの健康状態や情緒まで判断するのは難しいと思います。
回答3:子ども3人とも健康体なのは、理想的な母体だったからかも
肯定派
カナミ(1984年生まれ/子供3人/図書館司書)です。私の妊娠中は、筆者の言う「理想的な母体」に当てはまっていると思いました。
つわりに関しては、1人目のときはお茶さえも吐いてしまうようなひどいつわりでしたが、安定期後には症状も落ち着いて、それなりに食事も摂れていました。2人目以降はつわりも軽かったです。
結婚と同時に退職していたので、妊娠時はいずれも専業主婦の立場でした。家事は休み休み行なっていたので、それほどつらいとは感じませんでした。

むくみや貧血も3回ともなかったので、母体の栄養状態は良かったと言えます。
その結果、生まれたときの体重も1人目2900グラム、2人目2915グラムで「3kg前後」、妊娠中に特に健康体だった3人目は3810グラムで一番大きな赤ちゃんでした。
そのあとの子供の健康状態も、今のところ喘息もなくて、アトピーなどの皮膚疾患もありません。上のお姉ちゃん2人はケンカしたり笑ったりの毎日を過ごしていて、なかなか喜怒哀楽が激しい子供たちです。
3人目はまだ生後8カ月ですので、情緒面での医師の診断を受けたことはありませんが、あやすとよく笑う子です。
こうしてみると、筆者の主張するとおり、「理想的な母体だったので、理想的な子どもが生まれた」ということになりますね。ただ、妊娠の経過は人それぞれです。理想的な妊娠生活を送れても、全ての妊婦さんが皮膚疾患も情緒面の問題もないお子さんが生まれるとは思いません。
それでも、私の場合は今のところ健康な子どもが産まれて育っているので、筆者の主張は正しいと言えます。
回答4:マタニティブルーや子どもの情緒は栄養面以外が原因
否定派
あきママ(1983年生まれ/子供5人/双子出産)です。私の場合、つわりは自分ではつらく感じていましたが、一般的に見ると軽いほうだったようで、何でも食べることができました。妊娠内容にも気をつけていたおかげか、長男、長女、四男はほとんど大きな病気をすることもなく、幼児期を過ごすことができました。
双子だった次男、三男も、双子のわりに体重もしっかりとあって(次男2550g、三男2398g)、私も子どもたちも何のトラブルもなく出産を迎えることができました。
でも、お腹の中にいる双子1人が摂れる栄養は、単胎と比べると少なかったのではないかと思います。そのせいか、他の兄弟に比べるとよく風邪をひきますし、肌も弱いところがあって、小さいころはよく病院に通っていました。
情緒の面では、長男、長女はいたって普通ですが、次男、三男、四男は非常に豊かでした。この違いは、私の産後の生活環境が精神面に影響しているように思います。
特に長男出産後は、初めての出産ですぐ自宅に帰って、誰も頼る人がいない中で1人での育児がスタートしたので、精神的にとてもつらかったです。

まだ小さな長男に感情的になったり、イライラしてしまったこともたくさんありました。そのせいで、少しおとなしい、内向的な性格になってしまったのかなと思います。
一方、3回目の出産以降は、体力的にしんどいなと思うことはありましたが、精神的なつらさを感じることもなくて、毎日を過ごすことができました。私も育児を楽しむ余裕があって、子供たちもおおらかに成長できたのかなと感じています。
以上の私の経験から、産後のマタニティブルーは母親の生活環境、子どもの情緒は産後の母親の精神状態が関わっていると思いましたので、栄養不足だけが赤ちゃんに悪い影響を及ぼすとは考えにくいです。
回答5:ウィダーインゼリーやカロリーメイトが主食だった私の結果
否定派
まこ(1984年生まれ/子供2人&元看護師)です。妊娠中の食生活を振り返ってみると、我ながらひどかったと思います。2回ともつわりによる体のだるさがひどかったので、日中はほぼ家で横になって過ごしていました。
食事の用意すらつらい状態だったので、ウィダーインゼリーやカロリーメイトが主食の日々で、「早く生まれきて~!」と願っていました。
そんな私から生まれてきた子どもたちですが、二人とも3,000g近く(1人目2892g、2人目2776g)ありましたし、感染症は長女は手足口病、長男はヘルパンギーナにかかったくらいです。アトピーや喘息もありませんし、健康優良児として感情豊かにすくすくと育っています。
一方、私の義母は農家生まれで、妊娠中はたくさんお野菜を食べて、栄養バランスには特に気を使っていたそうです。ですが、3人の子どものうち、夫だけは今も重いアトピー性皮膚炎に苦しんでいます。
もし、書籍の主張どおり母体の栄養状態が影響しているのならば、夫ではなくうちの子供たちがアトピーに苦しむことにならないとおかしいです。
また、「栄養状態がマタニティブルーを引き起こす」という説についても、子どもを産んでからは心身ともに安定して、一人目、二人目ともに産後数日で仕事復帰できたことを考えると、否定せざるを得ません。
よって、この書籍で主張されている「妊娠中の栄養状態が悪いと、胎児の成長や赤ちゃんに悪影響が出る。マタニティブルーの原因になる」という説は、正しくないと思います。