葉酸サプリクラブ管理人(サプリメントアドバイザー&サプリメントマイスターの笹目)です。
授乳中の葉酸や鉄の推奨摂取量は、妊娠期間中よりもだいぶ少なくなります。その一方で、母乳に含まれる栄養素を考慮して、妊娠中よりも推奨摂取量が増える栄養素がたくさんあります。
軸にして摂るべき栄養バランスが妊娠中と大きく変わりますので、妊娠中に飲んでいた葉酸サプリでは栄養バランスが悪いです。授乳期にふさわしい葉酸サプリを選ぶようにしてください。では、どんな基準で選べばよいのか解説していきます。
授乳期のビタミンとミネラルの推奨摂取量と不足量
授乳中は、下記のように14種類のビタミンやミネラルが食事だけでは不足します。
ビタミン | 推奨摂取量 | 平均摂取量 | 授乳期推奨 | 不足量 |
---|---|---|---|---|
ビタミンB1(mg) | 1.1 | 0.78 | 1.3 | 0.52 |
ビタミンB2(mg) | 1.2 | 1.02 | 1.8 | 0.78 |
ナイアシン(mg) | 12 | 12.7 | 15 | 2.3 |
ビタミンB6(mg) | 1.2 | 0.95 | 1.5 | 0.55 |
ビタミンB12(μg) | 2.4 | 4.9 | 3.2 | なし |
葉酸(μg) | 240 | 240 | 340 | 100 |
パントテン酸(mg) | 4 | 4.92 | 5 | 0.08 |
ビタミンC(mg) | 100 | 66 | 145 | 79 |
ビタミンA(μg) | 700 | 484 | 1,150 | 666 |
ビタミンD(μg) | 5.5 | 5.8 | 8.0 | 2.2 |
ビタミンE(mg) | 6.0 | 5.9 | 7.0 | 1.1 |
鉄(mg) | 6.5 | 6.7 | 9.0 | 2.3 |
亜鉛(mg) | 8 | 7.3 | 11 | 3.7 |
銅(mg) | 0.8 | 0.99 | 1.3 | 0.31 |
カリウム(mg) | 2,000 | 1,925 | 2,200 | 175 |
ヨウ素(μg) | 130 | 1,000~3,000 | 270 | なし |
セレン(μg) | 25 | 100 | 45 | なし |
モリブデン(μg) | 25 | – | 28 | – |
※日本人の食事摂取基準(2015年版)、平成28年国民健康・栄養調査報告を元に葉酸サプリクラブにて作成
※推奨摂取量、平均摂取量は30代女性
※ビタミンD、ビタミンE、カリウムは目安量
続いて、この表の見方、見るべきポイントを3つに絞って解説します。
1.授乳期は、葉酸や鉄よりも「ビタミンA」が圧倒的に不足
妊活中~妊娠初期の「葉酸」、妊娠中期~後期の「鉄」は、普通の食事だけでは確実に足りなくて、サプリで補ってあげないと、推奨摂取量を満たせませんでした。授乳期に入ると、依然として葉酸や鉄は食事だけでは推奨摂取量に足りませんが、頑張れば食事だけでもカバーできる人も出てきます。
ですが、食事だけで推奨摂取量を満たすのは確実に無理なのが、「ビタミンA」です。母乳を通じて赤ちゃんに大量に送り込む必要があるのですが、その推奨摂取量は30代女性の場合「1,150μg」です。
母乳中には、1日320μgもの大量のビタミンAが分泌されます。そのため、この320μgに個人差による変動係数や、推奨量の算定係数をかけ合わせて、丸め処理(要するに四捨五入みたいなもの)した数値「450μg」が、授乳期に推奨されている「付加量」です。
この付加量は、30代女性の推奨摂取量「700g」が前提にあるので、700+450=1,150μgという大容量が、授乳中に推奨されているビタミンAの摂取量となります。ですが、平成28年国民健康・栄養調査結果の概要PDFによると、30代女性は食事から平均484μgしか摂取できていません。
授乳期の推奨摂取量1,150μgをクリアするには、食事量を単純に2倍にしても足りません。ですが、ビタミンAが666μg以上配合されているサプリを選ぶと、食事と合わせて1,150μgに到達します。
2.母乳だけで育つ乳児の75%が「ビタミンD」不足
冒頭の表を見ておわかりのとおり、授乳期に付加量が設定されている栄養素はたくさんあります。食事だけで足りている栄養素も含めれば、18種類ものビタミン・ミネラルは、通常時よりも摂取量が増えます。
増えますが、食事摂取基準の報告書を見ると、いずれも「母乳中に含まれる分だけ多く設定しました」程度の記載で、不足したら具体的にどうこうという話までは書かれていません。
ですが、ひとつだけ明らかに毛色が違うのが「ビタミンD」です。「不足するとどうなるのか」まで書かれています。そして、新生児には高確率でビタミンDの不足が発生することが世界的にわかっています。
そのため、アメリカとカナダでは、粉ミルクにビタミンDの強化が義務づけられています。特に、アメリカはかなり力を入れていて、AAP(米国小児科学会)は、出産後すぐの新生児や、ミルク育児中の乳児にもビタミンDのサプリを飲ませることを推奨しています。
(参照:Dietary Reference Intakes for Calcium and Vitamin D)
(参照:Prevention of rickets and vitamin D deficiency in infants, children, and adolescents.)
日本でも、2017年9月に行われた「第27回日本外来小児科学会」において、順天堂大学小児科医の中野聡医師が「母乳だけで育つ乳児の75%がビタミンD不足」と発表しました。
ただし、日本ではさすがに新生児や乳児にサプリを飲ませることは、厚生労働省は推奨していません。授乳中の母親に対して、妊娠前の目安量5.5μgに2.5μgを加えた「8.0μg」を摂ることが目安量として推奨されています。
30代女性は食事から平均5.8μg摂取できていますので、サプリからは2.2μgを補えば8.0μgをクリアできます。ところが、ここに落とし穴があります。「プレミン」のレビューでも解説しましたが、ビタミンDは食事だけではなくて、別途日光を浴びて作り出す必要があります。食事+日光=15μgが本当の推奨量です。
ビタミンDを多く補給している母親は、母乳にも多くのビタミンDが含まれます。(参照:Maternal Versus Infant Vitamin D Supplementation During Lactation: A Randomized Controlled Trial)そのため、食事で足りない分だけを補うよりも、授乳中の目安量「8μg」すべてをサプリだけで摂っておいたほうが良いです。
そうすれば、残り7μgを、食事または日光を浴びて作ればよいことになります。食事からは平均5.8μg摂れていますので、あとは1.2μgを日光で作れば、本当の推奨量15μgに到達します。お昼に2時間ほど日光を浴びれば約7.5μgのビタミンDが作られますので、1.2μgなら19分ほどの日光浴で推奨量をクリアできます。
仮に、1日12時間も日光を浴びる場合でも、生成されるビタミンDは45μgです。食事5.8μgとサプリ8μgを足しても、耐容上限量100μgには届きませんので、過剰摂取の心配もありません。
むしろ、食事に加えてサプリで8μgを補ったとしても、15μgには届かないのが現状です。だから、母乳育児だとかなりの確率で赤ちゃんのビタミンDが不足してしまうわけです。そうならないように、食事、日光浴、サプリをフル活用して、母乳中に含まれるビタミンDの濃度を満タンにしておくとよいです。
3.授乳期は、葉酸の推奨量が妊娠中期・後期よりもさらに減少する
妊活中~妊娠初期の「640μg」から、妊娠中期・後期は「480μg」へと推奨摂取量が減った葉酸ですが、授乳中はさらに減って「340μg」になります。
このくらいになると、頑張れば食事だけでも摂れてしまう人も出てきます。実際、70歳以上のおばあちゃんは、食事から平均318μgの葉酸を摂取できています。
ただし、葉酸サプリのメイン購買層である30代女性だと240μgが平均摂取量なので、さすがに食事だけでは苦労します。特に、出産後は赤ちゃんのお世話やらで忙しいので、なかなか自分の食事にまで気を遣うのは大変です。
なので、サプリからは不足分の「100μg」だけ補ってあげればOKです。この100μgは、妊娠中期・後期と同じで、合成葉酸(モノグルタミン酸型)ではなくて「天然葉酸(ポリグルタミン酸型)」のほうが理想です。
「授乳中も葉酸は必要です!母乳育児をしたいなら、引き続き飲みましょう!」などと言って、妊娠中の合成葉酸サプリを買わせようとする会社やサイトには気をつけてください。授乳中に合成葉酸を400μgなんて摂る必要ありません。
DHAも摂っておくといいかも。でも、EPAを摂るのはNG
さらに、授乳中はビタミン・ミネラル以外に、「サプリで摂っておくといいかも」と言える栄養素があります。それが「DHA」です。「いいかも」レベルです。現時点でのエビデンスはそれほど高くないです。データ不十分の段階です。「DHAは赤ちゃんに良い」というデータがある一方で、魚油は赤ちゃんの知性に有益ではないというデータもあります。
DHAは、食事摂取基準は設けられていません。α-リノレン酸やEPAも含めた「n-3系脂肪酸」として、「1.8g」が目安量として設定されています。30代女性は、食事から平均で「1.89g」のn-3系脂肪酸を摂れていますので、普通に食事ができていればサプリから補う必要はありません。
ですが、n-3系脂肪酸の中でも「DHA」は、赤ちゃん用の粉ミルクにも添加されています。日本だけでなくて世界各国の乳児用粉ミルクにもDHAが配合されています。実際、国内主要メーカーの粉ミルク100gあたりのDHA配合量を調べると、
- 明治「ほほえみ」:100mg
- 和光堂「はいはい」:80mg
- 和光堂「ぐんぐん」:80mg
- 森永「E赤ちゃん」:70mg
- 森永「はぐくみ」:70mg
- 雪印メグミルク「ぴゅあ」:70mg
- ビーンスターク「すこやか」:70mg
で、70mg~100mgのDHAが配合されています。なので、ミルクで育てる人は必要ないですが、母乳育児の人はサプリでDHAをしっかり補っておいたほうが「安心」です。
粉ミルクは赤ちゃんに直接届きますが、母乳は母体を通じて赤ちゃんに届きますので、粉ミルクの数字よりは多く摂っておいほうがよいです。そこで、授乳期用のDHAサプリを見てみると、
- ピジョン「DHAプラス」:350mg
- 森永乳業「ママのDHA」:350mg
- 雪印ビーンスターク「赤ちゃんに届くDHA」:350mg
- 和光堂「授乳ママチャージ」:350mg
いずれも「350mg」のDHAが配合されています。雪印ビーンスタークが実施した研究でも、サプリから350mgのDHAを摂取することで、母乳中のDHA量が増えることがわかりました。(参照:日本人の授乳婦に対するDHA含有サプリメント摂取の影響【PDF】)
また、DHAの含有量を増やそうとすると、必然的にEPAの含有量も増えてしまいます。多ければ良いというものではありません。そのため、授乳中のDHAサプリは、大手メーカーの基準値である「350mg」が配合されているかをチェックしていきます。
なお、注意するのは「EPA」です。DHAサプリは魚油から摂ることが多いですが、もれなくEPAも含まれます。EPAは、妊娠中も授乳中もサプリでの摂取は推奨されていません。まともなメーカーであれば、EPAサプリの注意書きに「妊娠中や授乳中の摂取を避けてください」と必ず書かれています。
↑ディアナチュラスタイル「EPA×DHA・ナットウキナーゼ」の場合
ただし、EPAの含まれる「魚油」は妊娠中も授乳中も摂取しても安全です。食事のみなら1日3gまで、サプリからは1日2gまでOKです。魚油を使っている以上、EPAは必ず含まれますので、授乳中は「EPAの含有量の少ないDHA含有精製魚油」からDHAを摂るようにしてください。
授乳期に飲む葉酸サプリのチェックポイントは4つ
まとめると、授乳期におすすめの葉酸サプリは、葉酸サプリの正しい選び方で解説している独自選定基準10個に加えて、
- ビタミンAが666μg以上配合されていること
- ビタミンDが8.0μg以上配合されていること
- 葉酸が100μg以上配合されていること(天然葉酸が理想)
- EPA含有量の少ない魚油(DHA)を使っていること
という条件を満たすかどうかを、最低限のチェック項目として策定しました。授乳中は「葉酸サプリ」というより、「ビタミンAサプリwith葉酸」的な位置づけです。
このチェック項目を前提にして、授乳中の葉酸サプリ(ビタミンAの配合量が666μg以上のもの。または授乳期用と謳っているもの)を辛口で採点した結果は下記の通りです。「評価の理由を読む」ボタンをタップすると、詳細レビューページへ移動します。
株式会社フック「ビタミンとミネラルの美的ヌーボ」
サプリのプロのおすすめ度:
バイエル薬品株式会社「elevit(エレビット)」
サプリのプロのおすすめ度:
株式会社マザーリーフ「みんなの葉酸100μg」
サプリのプロのおすすめ度:
・鉄が無駄に多い
・ビタミンA、カルシウムが少ない
株式会社フューチャーゲート「NOCOR ノコア インナーコア グローアップサプリメント 葉酸+DHA/EPA」
サプリのプロのおすすめ度:
・葉酸が400μgを超えている
・加工デンプンを使用。どの種類を使っているのか開示してくれなかった
・EPA含有率が30%を超えている
アサヒグループ食品株式会社「和光堂 授乳ママチャージ」
サプリのプロのおすすめ度:
・葉酸が400μgを超えている
・ビタミンAが入っていない
・加工デンプンを使用
・鉄多すぎ
株式会社たけひろ「すくすく母乳の泉」
サプリのプロのおすすめ度:
・使用している野菜類の中に授乳中NGの植物が使われている
株式会社ユニヴァ・フュージョン「マミーズベスティMama Omega -ママオメガ-」
サプリのプロのおすすめ度:
・ビタミンAが入っていない
・葉酸が400μgを超えている
・授乳期に避けたいゴジベリーを配合
・2019年3月29日に、ユニヴァ・フュージョンが販売している別商品「コンブチャクレンズ」が、景品表示法違反で消費者庁により措置命令を受けている(参照PDF)
株式会社カラーズエンターテインメント「現役産婦人科医が考えた授乳期サプリ」
サプリのプロのおすすめ度:
・ビタミンAが入っていない
株式会社メニコン「プレグナベーシック」
サプリのプロのおすすめ度:
・加工デンプンを使用しているが、「オクテニルコハク酸デンプンナトリウム」なので、NGというわけではない。
・DHAが摂れないが、DHAサプリを別途追加すれば及第点
ピジョン株式会社「母乳パワープラス」
サプリのプロのおすすめ度:
・DHAが摂れないが、DHAサプリを別途追加すれば及第点
ゲンナイ製薬株式会社「プレミンママ」
サプリのプロのおすすめ度: