葉酸サプリを男性が無理して飲む必要はない!その理由を全力で解説

葉酸サプリクラブ管理人(サプリメントアドバイザー&サプリメントマイスターの笹目)です。

「葉酸サプリは男性も飲んだほうが良い」という情報がネット上に散見しますが、サプリメントアドバイザーの立場から言わせていただくなら、男性は妊活目的で無理してサプリメントで飲む必要はありません。なぜ、そう言い切れるのか、読者さんからいただいたメールを元に科学的に解析したいと思います。

男性も葉酸サプリを飲むべき?

販売メーカーは、顧客単価を引き上げるための口実を作り出している

葉酸サプリクラブ読者さんから下記のような相談メールが届きました。

私は今、妊娠を希望しております。男性も妊娠希望の3ヶ月以上前から葉酸を摂取することが推奨されていると知り、夫婦で飲める葉酸のサプリを探しています。一番オススメとされているママニックの葉酸サプリ(2016年2月時点)を男性が飲んで問題ないのかわかりませんでした。

ベルタ葉酸サプリは夫婦で飲めるコースも設定されているのですが、体質に合わなかった時の返金保証などがないので、もし、ママニックを男性が飲んでも問題ないのであれば、ママニックを検討したいと思っています。

参考レビュー:ママニック葉酸サプリの口コミ。プロの辛口評価。
参考レビュー:ベルタ葉酸サプリに危険性はないの?プロの口コミレビュー

他にも「旦那と二人で飲むことを考えていますが、男性も合成葉酸が良いのでしょうか?」「男性用にオススメはありますか?」といった相談もありました。結論から言いますが、ママニック葉酸サプリを男性が飲んでも何も問題はありません。

ですが、合成葉酸が推奨されているのは、妊娠1ヶ月以上前~妊娠3ヶ月目までの「女性」です。お金に余裕があるのなら夫婦で一緒に飲んで良いですが、男性は無理して飲む必要はありません。

サプリを売っているメーカー側は、顧客単価を上げるために色々な手を尽くします。これは健康食品業界でよくあることですが、「○○(原材料)に▲▲の効果があったと××大学の研究で明らかになりました!」と一つの研究データだけを持ち出して、エビデンス(科学的根拠)を語ろうとします。

それが健康食品会社の仕事と言えば仕事ですので、メーカー側がそのような「セールス」を仕掛けること自体には何も言いません。しかし、あくまでも第三者的な立場であるはずの紹介サイトが、メーカー側に寄り添って一緒になって「男性も葉酸サプリは必要です!」と言うのはいかがなものかと思っています。

当サイトのようなサプリの紹介サイトは、メーカー寄りではなくて「消費者寄り」の情報を発信するのが仕事だと思っています。ですので、男性が葉酸サプリを飲む必要性について、当サイトでは「本当のこと」を科学的根拠に基いて解説していきます。

エビデンスが不十分な2008年のデータを持ち出している件

まず、「男性も葉酸サプリを飲んだほうが良い」という情報はどこから来ているのでしょうか。情報元になっているのが、アメリカの医学誌「Human Reproduction」2008年3月20日号に掲載されたカリフォルニア大学バークレースクールの公衆衛生研究グループ・Brenda Eskenazi(ブレンダ・エスケナズィ)氏の研究結果のようです。

当時のニュース記事がアメリカの「Health Day」というサイトに掲載されています。その中に次のような記載がありました。

In the study, Eskenazi’s group analyzed sperm from 89 healthy men. In addition, the researchers asked the men about their daily consumption of zinc, folate, vitamin C, vitamin E and beta-carotene.

参照:http://consumer.healthday.com/disabilities-information-11/misc-birth-defect-news-63/low-folate-levels-may-harm-sperm-613697.html

「89人の健康な男性から」と書かれていますね。こんな少人数ではお話になりません。科学的なエビデンスの有用性を計るレベルは全部で6つのレベルに分類されます。このレベルのうち、最上位レベルが医薬品と同等レベルです。医薬品レベルには、各国の政府機関による科学的検証をクリアする必要があります。民間の研究機関レベルでは相手にされません。

次に、上から2番目のレベルに評価されるには、RCT(無作為化比較試験=ランダム割付比較試験)、要するに臨床試験において、数百人~数千人の被験者数が必要となります。しかも、この規模の臨床試験を「2つ以上」実施して証明しないと、科学的な根拠があるとは認められないのです。

ですから、一つの大学の89人の研究データでは、信頼できる情報と言うには遠く及ばないのです。しかも、これは2008年の研究データです。先ほどの「Health Day」の記事冒頭にも、

Please note: This article was published more than one year ago. The facts and conclusions presented may have since changed and may no longer be accurate. (ご注意ください:この記事は、一年以上前に出版されました。提示された事実と結論が変更されている可能性があるので、もはや正確ではないかもしれません。)

「もはや正確ではないかも」と書かれています。未だに最新の研究データは挙がってきていません。それにも関わらず、こんな古い正確ではないかもしれないデータを元にして、「男性も葉酸サプリを飲んだほうが良いです!」みたいな情報を発信しているサイトが山のごとしとあります。

さらに古い2002年の「異常値」を持ち出しているサイトまで

他にも、もっと古い2002年にオランダで行われた試験結果を持ち出して、「男性も妊活中は葉酸サプリを摂取すべき」などと称しているサイトもあります。

葉酸の「女性」への有用性については、研究が始まったのは1990年代です。日本で厚生労働省が通知したのも2000年です。「・・・2002年よりも古いじゃん」と思うかも知れませんが、被験者数の数が桁違いで、世界各国で何度も臨床試験が行われています。

たとえば、アメリカの場合は1992年に世界で初めて葉酸摂取の有用性を公表しました。その後も2009年に葉酸サプリの推奨を米国医師会雑誌(JAMA)に掲載して、さらに再調査をした最新の結果が、2017年1月にJAMAに再掲載されているのです。(参照:USPSTF Recommendation: Folic Acid to Prevent Neural Tube Defects

一方、このオランダの試験は、無作為化比較試験を実施していますが、対象サンプルは100人ちょっとです。

この試験の最後には「まだ確立されていないが、この発見は将来の妊娠可能性の研究と治療の道筋を開き、公衆衛生に影響を与える可能性がある」と書かれていますが、2002年以降、新たな試験は実施されていません。

本当に有用な試験結果ならば、女性の葉酸摂取のように繰り返し検証が行われて、確固たるエビデンスを出すように動くはずです。ですが、一向に新たな試験結果が公表されない時点でお察しです。

というのも、試験で使われた葉酸量が「1日5mg」という超高用量です。高用量の葉酸摂取は、健康被害のリスクを伴います。医師の管理下にある場合を除いて、1mg超えるべきではありません。

それにも関わらず、この5mgという異常値を使ったデータを持ち出して、「男性も葉酸を摂るべきです」などと言っているのです。さらにそこから「男性は1日240μgが推奨量です」と食事性葉酸(天然葉酸)の摂取量に結びつけているのですから、辻褄が合いません。この異常値を持ち出すなら、合成葉酸5mgを推奨しないと意味ないでしょうに。

30代男性は、食事から1日平均263μgを摂取できていますので、1日の推奨摂取量240μgを食事だけで軽く超えています。不足していませんので、サプリで補う必要などありません。

もちろん、今後の研究次第では「妊活中は男性も”別途”葉酸サプリを摂りましょう」と断言できる試験データが出てくる可能性はゼロとは言い切れません。しかし、2002年以降、信頼できるエビデンスが公表されていませんし、食事のみで足りているのが現状です。

よって、現時点では「妊活中の男性も葉酸サプリを飲みましょう」なんて、言える状況にはありません。論理の飛躍にもほどがあって呆れます。

ネット上に氾濫している過剰表現の数々に騙されないように!

一方で、男性ではなくて女性(妊婦)が葉酸を摂取した場合については、上から2番目の有用性レベルをクリアしています。数百人~数千人のヒトを相手に実施された2つ以上の無作為化比較試験で、結果が得られているのです。男性と女性では、有用性レベルは比べ物になりません。

その他にも葉酸の「有用性レベル2」をクリアしているものは3つあります。ですが、いずれも妊活や妊娠とは関係のないものです。

ネット上には、葉酸を摂ると「流産の防止に繋がります」とか「妊娠率、着床率を上げてくれます」とかいう過剰な表現が氾濫しています。しかし、それらは国際的に信頼できる書籍には「科学的データが不十分」に分類されていて、有用性レベル3以下にも入っていません。

男性の葉酸摂取については、「科学的データが不十分」のリストにすら入っていません。何らかの信頼できそうな研究結果があれば「科学的データが不十分」リストに載るのですが、ここにすら載っていないのです。

これが真実です。この書籍は、アメリカのFDA、イギリス、カナダ、オーストラリアなどの各国政府機関、医療施設で採用されている超信頼できるデータの日本語版です。

買うのは自由ですが、当サイトではおすすめしません。

ですから、妊活中に「夫の葉酸サプリも買わないといけない」なんてことはありません。厚生労働省が葉酸サプリで合成葉酸の摂取を推奨しているのは「女性」だけです。騙されないでください。

中には、オスのマウス(ねずみ)を使った実験を持ち出して「男性が葉酸不足だと胎児が奇形になる!」だとか煽っているサイトもあります。ですが、薬や添加物の毒性試験じゃないのですから、ヒトに対する結果を元にしないと意味がありません。

しかも、30代男性は1日の葉酸推奨量240μgに対して、平均摂取量は263μgです。食事だけで推奨量を軽く超えていますので、妊活、妊娠中という出費も増える時期に、無理して夫婦セットの葉酸サプリを買う必要はないのです。

もちろん、信頼できるデータではありませんが、何かしら良い結果が得られた研究データあるのは事実です。葉酸自体は、男女関係なく健康維持に必要な栄養素でもあります。男性が妊婦向けの葉酸サプリを飲んではいけないわけでもありません。

ちなみに、男性でも葉酸を1日400μg摂取すると、「有用性レベル3」の某健康メリットに繋がります(これ以上具体的に書くと、厚生労働省に怒られるので書けません)。

その一方で、葉酸サプリは「鉄」を多く含むものがあります。男性は女性と違って鉄を多く摂る必要はなく、むしろ多く取り過ぎて体内に蓄積されてしまうほうが問題です。1日に鉄が15mgも摂れてしまうような葉酸サプリを毎日飲むのは、男性にはおすすめしません。

結局のところ、「妊活中に葉酸サプリを旦那にも飲ませたい」と言うのでしたら、「気休め」「お守り」程度の感覚で、お金に余裕があるならどうぞご自由に。当サイトでは何もおすすめしていませんし、鉄の摂り過ぎには気をつけてください。というのが私の結論です。

2017年4月8日追記:父親が葉酸を摂りすぎると、子どもに悪影響が出る?

先ほど、「動物実験では意味がない」と書きましたが、当サイトでは悪影響に関しては動物実験の結果も参考にしています。なぜなら、添加物の安全性は動物で検証しているからです。そんな中、2017年4月4日に分子精神医学を扱う「Molecular Psychiatry」に、気になる情報が掲載されました。

「葉酸、L-メチオニン、コリン、亜鉛、ベタイン、ビタミンB12を多く含む食事を、オスのマウスに6週間与え続けたところ、生まれた子マウスに悪影響が出た」というのです。(参考:A paternal methyl donor-rich diet altered cognitive and neural functions in offspring mice

これはあくまでもマウスを使った実験ですが、男性が葉酸を過剰摂取すると、子孫の健康に悪影響を及ぼす可能性があるかもしれません。

2020年9月5日追記:不妊治療中の男性が葉酸と亜鉛サプリを飲んだ場合

2020年1月のJAMA(米国医師会の医学誌)に、葉酸と亜鉛サプリを飲んだ場合のRCT(ランダム化比較試験)の結果が掲載されました。

参照:Effect of Folic Acid and Zinc Supplementation in Men on Semen Quality and Live Birth Among Couples Undergoing Infertility Treatment: A Randomized Clinical Trial | Complementary and Alternative Medicine | JAMA | JAMA Network

これは1日に5mg(5,000μg)という高用量で検証した結果ですが、不妊治療中の男性にとって飲む意味がないどころか、よろしくない結果まで出てしまっています。